猫をペットショップで買うことはそんなに悪いことなのか

近年、保護猫の譲渡活動が注目を集める中、ペットショップでの猫の購入に対して批判的な意見が増えています。SNSでは「ペットショップで買うなんて無責任」「保護猫を引き取るべき」といった声が目立ち、ペットショップで猫を迎えた飼い主が後ろめたさを感じるケースも少なくありません。

しかし、ペットショップでの購入そのものが「悪」と決めつけてしまうのは、果たして適切な判断でしょうか。

入手経路 主な特徴 メリット
ペットショップ 月齢が明確、健康管理が行われている 品種や性格を選べる、初期サポートが充実
保護猫譲渡 過去の環境が様々、多様な年齢層 命を救える、譲渡費用が比較的低額
ブリーダー 親猫の確認が可能、専門的なアドバイス 遺伝情報が明確、飼育環境を確認できる

法規制下で営業する事業者の役割

実は、日本のペットショップは厳格な法律の下で営業しています。環境省が定める動物愛護管理法により、ペットショップやブリーダーは都道府県への登録が義務付けられており、飼養施設の構造や動物の管理方法についても細かい基準が設けられているのです。

事業者には動物取扱責任者の配置や定期的な研修受講が求められ、販売時には18項目にわたる重要事項の対面説明も必須とされます。

これらの規制は、適正な飼育環境を維持し、購入者が正しい知識を得た上で猫を迎えられるようにするためのもの。悪質な業者には改善命令や登録取消などの措置が取られるため、制度上は動物福祉が保たれる仕組みになっています。

保護猫活動との共存という視点

保護猫の譲渡活動は確かに尊い取り組みであり、各地で開催される譲渡会には多くの団体やボランティアが関わっています。けれども、保護猫を迎えることだけが正しい選択だと断言できるでしょうか。

譲渡には厳しい審査があり、単身者や高齢者、賃貸住宅居住者などは条件を満たせない場合もあります。また、子猫を希望する家庭や特定の品種にこだわりたい人もいるでしょう。

ペットショップの存在を否定するのではなく、保護猫活動と共存する形で、それぞれの選択肢が尊重される社会を目指すことが大切です。どちらか一方を絶対視することは、かえって猫と人の幸せな関係を狭めてしまうかもしれません。

購入先より重要な「飼い続ける覚悟」

猫をどこから迎えるかという議論以上に大切なのは、迎えた後の責任です。猫の平均寿命は15年以上にも及び、その間には病気や介護といった困難な局面も訪れます。経済的な負担も決して軽くはありません。

  • 定期的なワクチン接種や健康診断にかかる費用
  • フードやトイレ用品などの日常的な消耗品
  • 病気やケガの際の治療費(高額になることもある)
  • 避妊去勢手術の費用
  • 老齢期の介護や通院にかかる時間と費用

購入か保護かではなく、終生飼養の意識

ペットショップで購入した猫も、保護猫として迎えた猫も、一度家族になれば同じ一つの命です。どこから来たかという出自よりも、最期まで大切に世話をする覚悟があるかどうかが問われます。

一般社団法人全国ペット協会も、飼い主の責任として終生飼養の重要性を強調しています。

購入した猫を手放す人がいる一方で、保護猫を迎えた後に飼育放棄をする人もいます。重要なのは入手経路ではなく、飼い主自身の覚悟と責任感なのです。ペットショップで購入することを批判する前に、私たち一人ひとりが「本当に最期まで面倒を見られるか」を問い直すべきでしょう。

多様な価値観を認め合う社会へ

命を扱う以上、倫理的な議論は避けられません。しかし、ペットショップでの購入を一方的に非難することは、かえって猫を迎えることへの心理的なハードルを上げてしまうかもしれません。大切なのは、どの選択をした人に対しても、適切な飼育環境と終生飼養の意識を持つよう促すことではないでしょうか。

保護猫活動を支持する人も、ペットショップで購入する人も、共に猫の幸せを願っているはずです。互いの選択を尊重しながら、社会全体で動物福祉のレベルを向上させていく姿勢こそが、今求められているのかもしれません。

ペットショップでの購入が悪いのではなく、無責任な飼い方や不適切な繁殖業者を許さない仕組みづくりに、私たちの意識を向けるべき時が来ています。