猫の多頭飼いで費用はどれくらい増える?知っておきたいお金の話

猫の多頭飼いを検討するとき、真っ先に気になるのが費用面です。1頭だけでも毎月の出費がかかるのに、2頭、3頭と増えていくと一体どれほど負担が増えるのでしょうか。
愛らしい猫たちに囲まれた生活は魅力的ですが、現実的な費用を知らずに多頭飼いを始めてしまうと、後々経済的な負担に苦しむことになりかねません。飼い主として責任を持って猫たちの幸せを守るため、事前にしっかりと資金計画を立てておくことが大切です。
多頭飼いで基本的にかかる年間費用
猫を多頭飼いすると、費用は単純に頭数分だけ増えるのが基本です。まずは1頭あたりにかかる年間費用を把握しておきましょう。
1頭あたりの年間支出は約23万円
アニコム損害保険の調査によると、1年間に猫にかけた費用の平均は231,450円です。内訳を見ると、おやつを含むフード代が43,205円、ワクチンや健康診断などの予防費が13,489円、病気やケガの治療費が40,356円となっています。
2頭飼いであれば年間約46万円、3頭であれば約69万円が目安になります。ただしこれはあくまで平均値であり、実際には猫の年齢や健康状態によって大きく変動する点に注意が必要です。
| 費用項目 | 1頭あたり年間費用 |
|---|---|
| フード代(おやつ含む) | 43,205円 |
| 予防費(ワクチン・健康診断) | 13,489円 |
| 治療費(病気・ケガ) | 40,356円 |
| その他(猫砂・爪とぎ等) | 約134,400円 |
| 合計 | 231,450円 |
多頭飼いで月々のフード代はどう変わるか
フード代は多頭飼いで確実に増える費用の一つです。アイペット損保の調査では、1頭飼いでは月平均2,745円だった主食代が、多頭飼いでは月平均4,482円になると報告されています。
おやつ代についても、1頭飼いの月1,303円に対して多頭飼いでは月1,589円です。まとめ買いで多少の節約はできるものの、基本的には頭数分だけ費用が増えると考えておきましょう。
完全室内飼いの猫の平均寿命は15.95歳と長く、良質なフードが増えたことで健康志向の飼い主さんが増えている点も費用増加の要因となっています。
- 1頭飼い:主食代2,745円、おやつ代1,303円(月計4,048円)
- 多頭飼い:主食代4,482円、おやつ代1,589円(月計6,071円)
多頭飼いで特に増える費用項目

多頭飼いでは、単純に頭数分だけ費用が増えるだけでなく、特定の項目で予想以上に出費がかさむケースがあります。事前に把握しておくべき重要なポイントを見ていきましょう。
医療費は頭数分以上に増える可能性
多頭飼いで最も費用がかかるのは医療費です。毎年のワクチン代が猫の頭数分必要なだけでなく、多頭飼育によって猫の間で感染症が広がるリスクも高まります。猫同士のケンカでケガをした場合、目に炎症が起こったり治療が必要になることもあります。
また、猫は高齢になると病気をしやすくなり医療費が上がる傾向にあります。単独飼育より健康管理が難しくなるため、病気の早期発見が遅れるケースもあるのです。複数の猫が同時に体調を崩した場合、一度に数十万円の医療費が発生する可能性も覚悟しなければなりません。
| 医療項目 | 費用目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 混合ワクチン接種 | 4,474円~6,514円/頭 | 年1回必要 |
| 健康診断 | 5,000円~15,000円/頭 | 5歳以上は年2回推奨 |
| 治療費(軽度) | 数千円~数万円/頭 | 感染症は複数頭に広がる |
| 治療費(重度) | 数万円~数十万円/頭 | 高齢猫は特に注意 |
トイレ関連費用は想定の1.5~2倍
トイレは最低でも頭数分、理想的には頭数プラス1個が必要です。2頭飼いなら3個、3頭飼いなら4個のトイレを設置するのが望ましいとされています。猫は他の猫が使ったトイレを使うことに強い抵抗があり、トイレが汚れていると粗相をする原因にもなります。
トイレ本体の購入費用だけでなく、猫砂代も大きな負担です。こまめに掃除ができない場合や大きなトイレを設置できない場合は、トイレ関連費用が通常の2~3倍にまで膨らむ可能性があります。
- トイレ本体:1個3,000円~5,000円×必要個数
- 猫砂:月1,000円~2,000円×頭数
- トイレシーツ(システムトイレの場合):月1,500円~3,000円×頭数
生活用品の共有は難しい現実
多頭飼いを始める前は「生活用品を共有すれば節約できるかも」と考える方もいますが、実際には共有できるものは少ないのが現実です。フードや猫砂などの消耗品は当然ながら頭数分必要ですし、爪とぎやおもちゃなども複数用意しなければ取り合いになってしまいます。
キャリーバッグも頭数分揃えておく必要があります。災害時や通院時に複数の猫を同時に運ぶ必要が生じるためです。結果として、生活用品にかかる費用はほぼ頭数分に増えると考えておくべきでしょう。
多頭飼いで費用を抑えるポイント

多頭飼いで確実に費用は増えますが、工夫次第で負担を軽減することは可能です。無理のない範囲で実践できる節約方法を紹介します。
まとめ買いとストック管理で賢く節約
フードや猫砂はまとめ買いをすることで単価を下げられます。オンラインショップでは定期購入割引を設けているところも多く、5~10%程度の節約が期待できます。重いフードや猫砂を自宅まで配送してくれるサービスは、買い物の手間も省けて一石二鳥です。
ただし、大量購入する際は保管場所の確保と賞味期限の管理が重要です。特にウェットフードは開封後の日持ちが短いため、消費ペースに合わせた購入を心がけましょう。
- ドライフードは開封後1ヶ月以内に使い切る
- 直射日光を避け、湿気の少ない場所で保管する
- 定期購入サービスで5~10%の割引を活用する
ペット保険の多頭割引を活用する
複数の猫を飼っている場合、ペット保険の多頭割引を利用できます。保険会社によって割引率は異なりますが、2頭目以降の年間保険料が数百円~数千円割引になるケースが一般的です。
医療費は予測が難しく、特に多頭飼いでは一度に複数の猫が体調を崩すリスクもあります。万が一の高額医療費に備えて、保険加入を検討する価値は十分にあるでしょう。ただし、保険料だけで判断せず、補償内容もしっかり比較することが大切です。
| 保険検討のポイント | 確認事項 |
|---|---|
| 補償割合 | 50%、70%、100%など |
| 年間補償限度額 | 通院・入院・手術ごとに設定 |
| 補償対象外項目 | 既往症や特定疾患の扱い |
| 多頭割引の適用条件 | 同一契約者・同一住所など |
予防医療で長期的なコスト削減
定期的な健康診断や予防接種は一見すると出費に思えますが、長期的には医療費の削減につながります。病気の早期発見により、治療費が数万円で済むケースと、進行してから数十万円かかるケースでは大きな差があるためです。
特に多頭飼いの場合、1頭が感染症にかかると他の猫にも広がる可能性があります。予防医療をしっかり行うことで、結果的に全体の医療費を抑えられるのです。動物病院によっては健康診断パックなどのお得なプランを用意しているところもあるので、積極的に活用しましょう。
多頭飼いを始める前に確認すべきこと
費用面の準備が整っていても、多頭飼いにはお金以外にも考慮すべき点があります。猫たちと飼い主の双方が幸せになるために、事前にチェックしておきたい項目を確認しましょう。
経済的な余裕と緊急資金の準備
多頭飼いを始めるには、毎月の固定費に加えて緊急時の医療費を用意できる経済的余裕が必要です。複数の猫が同時に体調を崩した場合、一度に10万円以上の支出が発生することも珍しくありません。
最低でも猫1頭あたり20~30万円の緊急資金を準備しておくことが推奨されます。2頭飼いなら40~60万円、3頭飼いなら60~90万円が目安です。この資金は普段の生活費とは別に、猫専用の貯金として確保しておきましょう。
- 毎月の固定費を無理なく支払える収入がある
- 猫1頭あたり20~30万円の緊急資金を準備できる
- 今後15年程度の飼育費用を継続的に支払える見通しがある
- 突発的な出費があっても生活に支障がない経済状況である
住環境と飼育スペースの確保
多頭飼いには十分な住空間が必要です。それぞれの猫がパーソナルスペースを持てる環境を整えられるか確認しましょう。特に猫は単独でのんびり過ごす時間や空間が必要な動物なので、これらが確保できない場合は多頭飼育は推奨できません。
また、相性が悪かった場合に部屋を分けて飼育できるスペースがあるかも重要です。ワンルームや1Kよりも、2部屋以上ある住居の方が多頭飼いに適しています。災害時に複数の猫を連れて避難する方法も事前に考えておく必要があります。
先住猫の性格と相性の見極め
すでに猫を飼っていて新しく迎えることを検討中であれば、今飼っている猫の性格をよく見直してから判断してください。フレンドリーな猫であっても、他の猫と暮らすことがストレスになる可能性があります。
猫同士の相性が決定的に悪い場合、ストレスから問題行動を起こしたり心因性の病気になったりすることもあります。できる限り事前に顔合わせをして、相性を確認しておくことが大切です。多頭飼育がうまくいくかどうかは、猫同士の関係にかかっているといっても過言ではありません。
| 確認項目 | チェックポイント |
|---|---|
| 先住猫の性格 | 他の猫に対して攻撃的でないか |
| 年齢差 | 活動量が大きく異なると相性が悪い |
| 健康状態 | 両方とも健康で感染症がないか |
| 飼育環境 | それぞれの居場所を確保できるか |